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 優しかった王の態度が豹変したのは、数年前に新しい王妃がやってきてからのこと。

 まるで『悪い魔法』にかけられてしまったかのように、実の娘である白雪姫につらく当たり、使用人と同じような扱いをするようになった。
 大臣始め、兵士に召使、生まれたばかりの頃から白雪姫の成長を見守ってきた人々は嘆き、大きな同情を寄せてくれたが、誰一人として王の権力には逆らうことは出来ない。それどころか、白雪姫の仕事を手伝った使用人が王の逆鱗に触れて処刑されたことを知ると、誰もが恐ろしくなり彼女のことは見て見ぬふりをするようになった。

 内心、新しい王妃は本当は魔女なのではないか疑う者もいたが、それを口に出すことは出来ない。そうすればきっと、自分も処刑されてしまうだろう。

 城中が恐怖と緊張に包まれる中、王妃から残酷な命令が1人の兵士に下った。

 ――白雪姫を殺してしまえ。

 美しく優しい白雪姫の命を簡単に奪うことなどできない。けれど命令に背けば、自分の命が危ない。

 深く悩んだ末、兵士は彼女を森まで連れてくると、すぐに奥深くまで逃げるように言った。そして知り合いの猟師から小鹿の肉を譲り受けると、それを白雪姫の肉として王妃に差し出したのだ。

 白雪姫は夜の森を彷徨い続け、何度も転んでは傷だらけになった。やがて朝を迎え、ふらふらになりながら辿り着いたのは一軒の家だった。恐る恐る中に入ると、そこにあったのは木で出来た小さなテーブルセットとこじんまりとしたキッチン。かまどの上には鍋が置いてあり、覗くとシチューが入っていた。
 あまりにもおなかが空いていた彼女は、お行儀悪くも近くにあったスプーンで直接鍋からシチューを食べた。

 奥にあった扉を開けてみると、そこは寝室のようで、ベッドが二つ、少し隙間を開けて並べられていた。昨夜から一睡もしていなかったのとお腹が満たされたこともあり、彼女はベッドに潜り込むと目を瞑った。
 石鹸の香りがするシーツの上で眠るのは久しぶりだった。



「今日は、僕の近くで寝るの!」

 弟のクルトが自分のベッドの隣をぽんぽん叩く。

「近くもなにも、3人で寝てるんだから同じことだろう?」

 そう言いながら、兄のテオがさりげなく白雪姫の枕を自分の方に引き寄せた。

 家主である2人の兄弟は、勝手に家に上がり込んだ彼女を咎めるどころか、事情を聞くと大きな同情を寄せてくれた。そして家に匿い、衣食住に満ち足りた生活を与えてくれた。

 鉱山で働きながら生計を立てている2人のため、白雪姫は積極的に家事を手伝った。城で使用人と一緒に働かされていた経験が役に立った。

 穏やかに流れて行く時間。それは彼女の凍り付いた心を溶かし、優しく癒してくれた。

 そんなある夜のことだった。いつものように2つのベッドをくっつけ3人並んで寝ていると、左隣にいる、いつもは真っ先に寝てしまうはずのクルトがやけに寝返りを打ち、眠れない様子を見せていた。
 どうしたのかと声をかけると、熱い吐息と共に耳元で囁かれた。

「君に触れてもいいかな」

 その意味はすぐに理解出来た。いつかはそうなると、いや、本当はもっと早くこういう誘いをされると覚悟していたほどだ。ここまで時間がかかったのは、2人が自分を大切にしていてくれた証拠だろう。

 黙ったまま、天井を見てこれからのことを考える。

 いつか城に戻る日がやってきたとして、その時にもう純潔を失っていたら、彼女は嫁ぎ先を失うだろう。なによりも体面を気にする王族や貴族が、処女ではない娘をめとるとは思えない。

 いつか、城に戻る日が来るとしたら――。

 白雪姫はすぐに、その可能性を心の中で打ち消した。自分はもう死んだことになっているのだ。もしも王妃があの城を去り、王が元の優しい気持ちを取り戻したとしても、芽生えてしまった不信感を完全に拭い去り、幸せに暮らせるとも思えない。

 彼女は覚悟を決めると頷いた。

 クルトが笑みを零し、ぎこちない仕草で顔を近づけて来る。震える唇がそっと重なり、すぐに離れる。それは白雪姫にとって初めての口づけだった。
 それから恐る恐るといった様子で伸びてきた手が、胸の膨らみを確かめるように動く。
 嫌悪感はまったくない。それどころか、こうされるのを待っていたかのように体が疼き始める。

「……クルト、下手くそ」

 右側から伸びて来た手が、クルトの手を払いのけた。そして慣れた手つきで、柔らかく、ゆっくりと彼女の快感を優しく引き出していく。

 どうやら、テオの方は経験があるようだ。テオはクルトに教えながら、彼女の身体を愛撫し始めた。2人から同時に身体を触られていることを、彼女は当然のように受け止めた。

 男性に裸を見せたり触らせたりするのは初めてで、ただそれだけが恥ずかしかった。

 テオが下腹部の濡れた場所を舐め、自分でも聞いたことのないような淫らな声が零れる。クルトは不器用ながら懸命に胸の先を舐め、合間合間に、可愛い、好きだと囁いてくれた。優しく身体を開いていくテオの指が、貪るように求めるクルトの舌が、彼女に我を忘れさせ、快感に溺れさせていく。

 無意識のうちに舐めて欲しい場所をねだり、誘うように体をくねらせていた。


 最初に中に入ってきたのはテオだった。おそらくテオはこれ以上ないぐらい優しくしてくれたはずだ。それでも想像以上の痛さに耐えきれず、身体を上にずらして逃げようとする彼女の手を、クルトが心配そうに握ってくれた。

 熱い塊が体の真ん中を行き来する間、彼女は唇を噛み、クルトの手を握り返しながらじっと耐えた。終わった後、満足そうに微笑むテオと目が会った時は、不思議な充足感と幸福感を覚えた。

 苦痛に歪む顔を目の当たりにし、遠慮しようとしたクルトを誘ったのは彼女だった。兄弟2人を平等に好きだという証拠を示したかったのだ。
 クルトのものを受け入れている間、テオは後ろからそっと抱きしめ、耳や、頬や唇に、キスの雨を降らせていた。

 全てが終わり、下腹部から二人分の白濁の液が溢れ出すのを感じながら、白雪姫は小さく安堵の息を吐き出した。


 この2人の傍が、自分の居場所。もうここ以外に行く場所なんて、行きたい場所なんてない。
 この数年、虐げられ続けた彼女がやっと見つけた安住の地だ。

 大丈夫、きっとこの場所で幸せになれる。
 そんな確信が彼女を包む。
 彼女がまだ生きていることを知った王妃が、ここまで追って来さえしなければ、きっと。


 ――きっと。



END






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